なぜ?から考える認知症ケア
目の前で起きていることには、きっと理由がある。
どうして今、怒っているのだろう。なぜ、不安に感じているのだろう。目の前で起きていることを丁寧に分解し、認知機能、感情、関係性などから「なぜ?」を一緒に考えます。
人とケアを、関係性から考える。
KOSUKE SAKAMOTO
KOSUKE SAKAMOTO · PERSONAL PROFILE
坂本 孝輔 Kosuke Sakamoto
株式会社くらしあす 代表取締役
東京都認知症介護指導者/介護福祉士

どんな人なのか
SPEAKER PROFILE
Kosuke Sakamoto
株式会社くらしあす 代表取締役
東京都認知症介護指導者/介護福祉士
1974年、東京都新宿区生まれ。東京福祉専門学校卒業後、特別養護老人ホーム、訪問介護、ケアマネジャー、福祉用具、小規模多機能、グループホームなど、さまざまな介護の現場を経験。
介護の仕事を続けるなかで、「仕事を通じて人は幸せになるべきだ」「介護は人が幸せになるためにあるべきだ」と考えるようになる。
介護を必要とする人だけではなく、その家族も、そこで働く人も、介護を通じて少し幸せになれる場所をつくりたい。そして、小さなことでも社会に役立つ仕事をしたい。そんな思いから、2012年に株式会社くらしあすを設立。
現在は東京都瑞穂町・青梅市で、通所介護、訪問介護、居宅介護支援の事業を運営。経営に加えて、現場でのケース検討や職員育成、管理者支援にも関わっている。
認知症ケアを中心に、介護施設・事業所、専門職団体、自治体等で研修・講演を行うほか、執筆活動にも取り組んでいる。
「なぜだろう?」と考えて、複雑なことを分解し、言葉にすること。気づけばそのまま仕事になっていました。
バンドではBass担当。
何を考えているのか
もともと私は、人間関係が得意な方ではありませんでした。人との関わりで失敗することもたくさんありました。
介護の仕事を始め、認知症のある人と関わるなかで、ずっと考えてきたのが「なぜだろう?」ということです。
どうして今、怒っているのだろう。
なぜ、不安に感じているのだろう。
この人には、今の状況がどう見えているのだろう。
私たちの関わり方は、どう伝わっているのだろう。
目の前で起きていることを一つずつ丁寧に見ていくと、認知機能だけではなく、その人の経験や感情、周囲との関係、環境など、さまざまなものが見えてきます。
そして、そんなことを続けるうちに気づきました。認知症のある人だけではなく、私たちはみんな同じ「人」なんだ、と。
一緒に働く仲間にも、自分自身にも、それぞれの感じ方があり、行動には背景がある。そして人は、周囲との関係によっても変わっていきます。
認知症ケアから始まった「なぜだろう?」という問いは、今では人材育成やチームづくり、会社の運営について考えるときにも、私の出発点になっています。
その人を丁寧に見つめることで、私たちの認識が変わる。認識が変われば、目の前の人の捉え方が変わる。捉え方が変われば、接し方も変わっていく。
その小さな変化の連鎖が、介護現場を明るく、あたたかいものにしていく。私はそう信じています。
どんなテーマを扱うのか
目の前で起きていることには、きっと理由がある。
どうして今、怒っているのだろう。なぜ、不安に感じているのだろう。目の前で起きていることを丁寧に分解し、認知機能、感情、関係性などから「なぜ?」を一緒に考えます。
「この人なら大丈夫」と思ってもらえる関係は、どうつくる?
入浴や着替え、服薬など、介護には人に身を委ねてもらう場面があります。認知症のある人が安心して介護を受けられる関係をつくるための、具体的な知識と技術を考えます。
「被害妄想」って、なぜ起こると思いますか?
「認知症だから、こういうことはあるよね」と受け止めてきた出来事を、一つずつ分解して考えてみる。認知機能、感情、経験、関係性などから読み解いていくと、「そういうことだったのか」とストンと腑に落ちる瞬間があります。
その瞬間、本人を見る視点が少し裏返る。見え方が変われば、明日からの関わり方も変わり始めます。
人間関係を「相性」だけで終わらせないチームづくり。
同じ利用者さんを見ても、職員によって考え方は違います。その違いを生かしながら、相談できる、考えられる、支え合えるチームをどうつくるのか。一緒に考えます。
このほか、認知症ケア・家族支援・人材育成・チームづくりなどをテーマに、研修・講演・執筆を行っています。
これまでの登壇
言葉で届ける

共著:落川 晃央、坂本 孝輔、椎名 淳一、中島 健 / 出版社:中央法規出版(2026年8月30日発行)
ISBN: 978-4-8243-0513-8
中央法規出版・2026年8月刊行
介護職が「よかれ」と思って行った対応が、本人にとって望ましくない結果につながることがあります。本書は、効率や安全を優先しすぎる場面、関係性や会話を省いてしまう場面などを取り上げ、日々のケアをよりよくするためのポイントを60のヒントで解説します。
「よかれと思って」の行動と本人の思いの間にあるずれを、チームで話し合う入口として使えます。具体例をもとに、研修前に視点をそろえたり、研修後に日々の関わりを振り返ったりできます。

共著:藤原 るか、坂本 孝輔 / 出版社:すばる舎(2023年7月23日発行)
ISBN: 978-4-7991-1134-5
すばる舎公式・全国書店にて好評発売中
食事・入浴の「拒否」や「帰宅願望」など、現場で直面するつらい場面での「かたくなな気持ち」を、認知症の人の視覚や感情のアンテナから分析。本人の安心感を引き出してそっと心を穏やかにするための具体的な接し方を、マンガや豊富な具体例を用いて解説した、現場でも家庭でもすぐ役立つ決定版実用書です。
東京都認知症介護指導者でもある坂本孝輔が、現場で伝えている「かたくなさを責めず、安心から関係をつくる」視点を学ぶ入口として活用できます。施設内で共通言語を持つための事前読書や、研修後の振り返りにも向いています。
現場から届いた声
研修やコンサルティングを受講された方からいただいた感想の一部です。
「拒否」という言葉を自然と使わなくなりました。なぜかたくなになるのかを先に考えるようになり、入浴を嫌がっていた方への声かけが変わりました。
いいひとメソッドは最初“演技”のようで抵抗がありましたが、まず安心してもらうという順番が腑に落ちました。苦手だった利用者さんとの距離が縮まっています。
チーム崩壊の失敗談がリアルで、自分の事業所にも当てはまる場面が多く耳が痛かったです。人を責めない振り返りを会議に取り入れています。
BPSDのある方への対応を数か月にわたって一緒に整理してもらえたのが心強かったです。バラバラだった職員の対応が、少しずつそろってきました。
家族対応をクレーム処理だと思い込んでいましたが、ご家族も同じように不安を抱えているのだと気づけました。
※ 掲載許可をいただいた感想を、個人が特定されない範囲で紹介しています。
一緒に考える
研修や文章、対話を通して、これまでとは少し違う視点から、目の前の人や出来事を見つめなおすきっかけを届けたい。
「そういう見方もあるのか」「はじめて、本人の気持ちに気づくことができたかもしれない」——そんな瞬間を皆さんと一緒に体験し、その小さな変化を、明日からの介護につなげていきたいと思っています。